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ゾラ『ごった煮』:第二帝政期の『ゴリオ爺さん』

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渡仏直前、急いで、ルーゴンマッカール叢書を読んでいる。
本日、『ごった煮』を読み終えた。
一読して、これは、第二帝政期の「ゴリオ爺さん」なのだと了解した。
バルザックの『ゴリオ爺さん』が主人公ラスヤニックの下宿ヴォケール荘を中心として描かれるように、
この小説も、主人公オクターヴ・ムーレが住む5階建てのアパートを舞台にしている。
事件はすべてここで起きる。
ブルジョワ達が住む、一見、立派ですまして見えるこのアパートも、実はその内実は色と金への欲望でどろどろになっている。
女中達は内庭にゴミを捨てながら、それぞれの家庭の不倫・吝嗇・諍いごとの情報を洗いざらいぶちまけている。
きれいに見えるのは外側だけ、そのはらわたは腐りきっている、というわけだ。
ゴリオ爺さんに相当するのはガラス会社の実直な会計係ジェスランで、彼は娘の不倫騒動のあげくに死ぬ。
しかし、じつはその彼も、女中アデールと関係しており、アデールは密かに出産して、赤ん坊を新聞紙に包んで街角に捨ててくる。同じ時、サロンでは嬰児殺しをけしからんとブルジョワ達がほざいている。
これはまさにブルジョワのダブル・スタンダードを描ききった作品だ。
バルザックは舞台の影響を受けていて必ず舞台設定してそこに人物を据えたとのこと(篠沢教授)だが、
ゾラもかならず小説の舞台のレイアウトを描いてから、小説を書いているようだ。
ここではその空間設定がムーレの住むアパートとなっているわけだ。
(『獲物の分け前』では温室付きの豪邸、『パリの胃袋』ではレ・アールの市場がその舞台になっている)。
by takumi1956 | 2010-08-11 22:00 | 文学
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鴨川左岸にて
by takumi1956
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